研究概要 |
TFSA-(bis-(trifluoromethanesulfonyl)amide,(CF3SO2)2N-)は、イオン液体を構成する代表的な陰イオンであり、FSA-(bis-(fluorosulfonyl)amide,(FSO2)2N-)からなるイオン液体では、TFSA系イオン液体に比べ、金属イオン濃度増加に伴う粘性増加やイオン導電率低下が極めて小さい。このような粘性の違いは、溶媒和錯体構造の違いに起因すると考えられる。Li+に2つのTFSA-が2座配位で溶媒和するが、FSA系イオン液体中の金属イオン溶媒和構造は明らかにされていない。また、イオン液体中ではいずれの陰イオンもS-N-S平面に対する2つのCF3基またはF原子に関する最安定trans体とcis体が平衡で存在するが、TFSA-は、Li+に配位するとcis体が安定化するが、その熱力学量は未知であり詳細な分子機構が不明である。本研究では、Raman分光とDFT計算、および、高エネルギーX線回折とMDシミュレーションにより、FSA-は、単座配位2分子と2座配位2分子の計3分子がLi+に溶媒和することを明らかにするとともに、Li+に溶媒和したTFSA-の異性化熱力学量を決定し、Li+溶媒和圏におけるcis体の安定化がイオン液体陽イオンによる2次溶媒和に基づくことを明らかにした。 さらに、TFS-(trifluoromethanesulfonate,CF3SO3-)は、TFAS-の単座類縁体であり、いずれの共役酸とも超強酸と考えられているものの、イオン液体中の酸性の強さは明らかにされていない。本研究では、種々の陽イオンからなるイオン液体中の直接pH測定からHTFSAおよびHTFSの酸性を評価し、両者の酸性の強さがほぼ同等であることを明らかにした。
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