研究課題/領域番号 |
20350039
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
林 久史 日本女子大学, 理学部, 准教授 (60250833)
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研究分担者 |
河村 直己 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (40393318)
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キーワード | 状態選別XAFS / 価数選別XAFS / スピン選別XAFS / 化学シフト / 共鳴X線非弾性散乱 / 価数揺動材料 / ランタノイド材料 / 局所構造 |
研究概要 |
本研究は、研究代表者が独自に開発したX線発光分光器、「孔雀型分光器」を高感度化しランタノイドの微弱発光線:Lγ_4線を高分解能分光することで、これまで誰もなしえなかったランタノイド化合物の「価数選別X線吸収微細構造(XAFS)」測定に挑むものである。 本年度は、前年度までに高感度化してきた「孔雀型分光器」を用いて、いくつかのCe系の標準物質と、機能性材料として注目されているCeB_6を試料とし、CeLγ_4スペクトルの高分解能測定に挑戦し、これに成功した。CeB_6については、30K近傍の低温測定にも成功した。Ce系標準物質で得られた興味深い結果は、既に論文にまとめた(Anal.Sci.)。低温でのLγ_4測定が可能になったので、有名な価数揺動材料であるEuPd_2Si_2について、EuLγ_4スペクトルの温度依存性測定にも挑み、これにも成功した。ここからEuの「価数選別したEXAFS」を導出することもできた。現在、投稿準備中である。 実験室における重元素のLγ_4スペクトルの化学効果の探索も進展した。しかしやや意外なことに、これまで探索した限りでは(Cd、I、Cs、Pr、Nd)、少なくとも実験室の波長分散型分光器では、大きな化学効果は観測されなかった。さらに探索をすすめ、総合報告としてまとめる予定である。 また本年度は、Lγ_4線を含めた様々な蛍光X線の元素吸収端近傍での共鳴発光を解析し、状態選別XAFSを抽出するソフトウェア(SIM-RIXS)を開発し、そのモデルケースとしてEu_2O_3のEuLγ_4スペクトルに適用してみた。その結果、吸収端近傍に「見えない構造」が埋もれているという興味深い結果が示唆されたので、早速、国際学会(Pacifichem2010)と論文(X-ray Spectrom.)で発表した。 上記の最新の成果に基づいて、発光分光分野全体を概観し(物理学会)、総合報告を執筆した(分析化学)。
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