本研究では、研究代表者が発明した投影型X線顕微鏡技術を発展させ、不均一な試料の構造情報を複眼的に取得するため、X線回折法およびX線吸収微細構造(XAFS)法の双方から得られる結晶構造、原子レベルの局所構造、価数、電子状態等の画像化を意図している。本技術の開発拠点として用いられてきたビームライン(高エネルギー加速器研究機構・放射光研究施設BL16A1)は現在では廃止されているため、第1年目の平成20年度は、新たな研究場所として選定したビームライン(PFAR NW2A)にて円滑にイメージング実験を実施するための条件検討、X線回折・XAFS複合イメージングの試料に関する条件、撮像条件等の検討等を実施する必要があった。アンジュレータが設置されているビームラインであるため、エネルギー走査を行う際に、アンジュレータギャップをどう扱うかが1つの技術的な問題になった。検討の結果、ギャップをモノクロメータと連動して変化させると、入射強度の変化が連続的にならず、XAFSスペクトルの品質が損なわれる。連動を諦めギャップを固定すると、広範囲のエネルギー走査は難しいが、吸収端やブラッグピーク近傍での変化を画像化できることがわかった。この問題はX線回折法とXAFS法を複合化する上で非常に重要なので次年度も検討を続けるが、当初計画の結晶-アモルファス混合系の解析は容易ではないことから最終年度に繰り延べる。他方、強度を大幅に増やすことを狙い、多層膜モノクロメータを導入したところ、予想を超える大幅な強度増を達成することができた。エネルギー分解能は犠牲になるが、化学組成・構造のイメージングを非常に迅速に行うことが可能である。
|