微少な流路内で化学反応を行うマイクロリアクターは、様々な分野で応用が期待されている反応デバイスであり、その特徴は大きな比界面積、迅速な混合といったように典型的な固-液不均一系反応である電気化学反応においては大変魅力的なものと言える。このため、マイクロリアクターの電気化学的利用が測定・分析の領域において急速に伸びてきている。しかし、マイクロリアクターは必ずしも少量の物質変換に限られるものではない。マイクロリアクターは通常フロー型であり、リアクター内の電解液は常に流れているので、その小さな内容積から想像されるより変換量はかなり多く(年間数トンオーダーの生産も可能)、電解合成・製造への応用展開も十分に考えられる。しかも、電極間距離がマイクロオーダーであるといった特徴を最大限に活用すれば、従来のバッチ型の電解セルでは決して実現できない全く新しい電解合成反応や電解システムが構築できることも予想される。我々はこのような観点に立脚し、マイクロリアクターの特徴を活用した有機電解合成反応や電解システムの開発を試みることにした。 以下に本年度実施した具体的な研究内容を記述する。 支持電解質を必要としない環境調和型電解合成システムの開発 1.溶媒に酢酸、アセトニトリルを用いることで支持電解質を加えることなく種々の有機化合物のアセトキシ化、アセトアミド化に成功した。 2.マイクロリアクターを積層化したフロー式積層型マイクロ電解セルを構築し、ナンバーリングアップの検証を実施した。 液-液平行流を活用した求核剤の電位に影響されない陽極置換反応システムの開発 3.N-カルボメトキシピロリジン以外の基質(ラクタム類、ピペリジン類など)やアリルトリメチルシラン以外の求核剤(シリルエノールエーテル類など)についても当該システムを適用し、その汎用性を確認した。 上記のように本年度はマイクロリアクターを活用した2つの有機電解システムの高度化と汎用化が達成された。
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