様々なイオンペアーをもつ高分子電解質を合成し、特に極性の低い媒質中で膨潤しうる親油性高分子電解質を合成し、それらが有機溶媒中や界面上でどの程度の高分子鎖のひろがりを持つかを様々な手段で明らかにする。そして、様々な媒質中(極性の高いものから低いものまで)でのイオン解離により膨潤する高分子電解質(親油性・親水性両方を含む)の分子設計指針を明らかにすることを目的とする。また、共通塩の効果や温度などの外部刺激による高分子電解質の収縮・膨潤などについても検討を行い、刺激応答材料としての基礎的な知見を得る。 特に、今年度は親油性高分子電解質ゲルの膨潤挙動の研究を展開し、高分子鎖と媒質の相溶性および媒質中でのイオン解離を制御することで、非極性有機溶媒から水までの媒質およびフッ素系溶媒・液晶など、それぞれの媒質に対応した高吸収性ゲル(架橋度1%で膨潤度100倍程度)を合成することをめざした。3種のモノマー特に長鎖第四級アンモニウムカチオン性のモノマーの対アニオンの交換を行い、様々なアニオンを有する一連のイオンペアーモノマーの合成を行なった。また、媒質と相溶性のよい高分子を与える主鎖の中性モノマー(90mo1%程度)様々に変化させて、ゲルの合成を行った。 その結果、アクリル系モノマーを用いた場合、アルキルエステルのアルキルの長さに応じて、その相溶性が変化し、様々な有機溶媒で100倍を超える膨潤度を示すゲルの構築につながり、ヘキサンやトルエンを除く、多くの有機溶媒を吸収することのできる材料の開発に成功した。 また、アニオンを連続的に変化させたところ、ハロゲンイオンやドデシル硫酸イオンなどをもつゲルでは極性の低い溶媒中では大きな膨潤度を示さなかった。これらの系では低極性溶媒中でのイオン解離が促進されず、逆に凝集作用を及ぼしたと考えられる。
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