本研究は、管径サイズを動的に調節可能な蛋白質中空シリンダーを構築し、その一次元内孔空間へ所望の生体高分子を吸入できるバイオナノチューブを創製するとともに、その分子包接ダイナミクスを明らかにすることを目的としている。 最終年度(平成22年度)は、研究代表者が中央大学・理工学部へ異動したが、研究計画の推進に支障はなく、充分な体制で成果とりまとめに臨むことができた。 一次元内孔空間への生体高分子の包接 アルブミンナノチューブの最内層にアビジンを配置すると、粒径の小さなビオチン修飾ナノビーズのみがサイズ選択的に捕捉されることを見出した(平成21年度成果)。そこで平成22年度は、最終目標である生体高分子(ウイルス)の捕捉に挑戦した。標的粒子としてヒトB型肝炎ウイルス[HBV(Dane粒子)、直径42nm]を選定、最内層にHBVの抗体である抗HBs抗体を配置したアルブミンナノチューブを調製した。HBV水溶液にナノチューブを添加後、HBVの濃度変化を化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法による抗原定量、PCR法によるDNA定量から詳細に解析した。その結果、感染能力のあるDane粒子のみが選択的にチューブ内孔に取り込まれていることがわかった。再内層に導入する抗体の種類を変えれば、様々なウイルスが捕捉できるものと考えられる。除去法の確立していないヒトE型肝炎ウイルスやヒトパルボウイルスB19が効率よく捕集できるようになれば、その医学的意義はきわめて大きい。 3年間で得られた結果を総合し、蛋白質ナノチューブの基礎化学、分子包接科学を整理した。
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