本研究は、研空代表者らがこれまでに構築してきた色素集合体にキラル源を導入し、これまでにはないらせん構造の構築とその応用探索を目的としている。H20年度はまずオリゴフェニレンビニレン(OPV)尿素誘導体にキラル源を導入した。この分子はクロロホルム有機溶媒中で自己集合し、巻き方向が揃ったらせん構造を構築することが原子間力顕微鏡により明らかになった。また、室温でCDスペクトル測定を行ったところ、CDシグナルが確認され、キラルな会合体が構築されていることがわかった。一方、OPV尿素誘導体はデカンなどの低極性有機溶媒中で集合させると層構造を形成することが明らかになっている。よって、らせん構造と層構造を溶媒によって作り分けることができ、これらの構造の違いによって電荷輸送特性も異なることが予想される。そこでこれら構造体をミリグラム単位で収集し、時間分解マイクロ波伝導度測定を行おうと考えた。しかしながら、らせん構造は高濃度では層構造に構造変化してしまうことが考えられ、ミリグラム単位でらせん構造体を収集することが困難であることがわかった。そこで種々の溶媒へのらせん構造の溶解度を検討したところ、ジクロロメタン中でマイクロメートルオーダーのファイバーを形成することが明らかになった。このマイクロファイバーはらせん構造がさらに集積してできていることが示唆される。今後、このらせん構造のX線回折測定と、電荷輸送特性などを精査する。 また、バルビツール酸を導入したOPV誘導体やペリレンビスイミドーメラミン複合体も極めてまれなコイル状のらせん構造を構築すことも見出した。これらについても集中的に研究を進めていく。
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