研究課題
本研究では、水素結合を用いた分子集合体を基盤とした新規なキラル現象の発現を目的とした。前年度まで、半導体特性を持つオリゴフェニレンビニレンやペリレンビスイミド分子集合体の螺旋構造の制御に成功してきた。H22度は、同様の手法をオリゴチオフェンとメロシアニン色素に適応した結果、共にらせん構造を効率的に形成できることが実証された。また、H22年度は、光によってらせん構造のねじれの向きを制御できる分子集合体の構築にも挑戦した。キラル側鎖を有するアゾベンゼンを柔軟なリンカーにより連結し、二量体とした。水素結合部として、アミド基も分子構造の中に組み込んである。この分子は有機溶媒中で自己集合し、一方向にねじれた集合体を形成し、強い円二色性(CD)活性を示すことが明らかになった。この集合体に紫外光を照射すると、アゾベンゼンのトランス構造からシス構造への幾何異性により会合がほどけ、CD活性が消滅した。興味深いことに、可視光照射によって再びトランス構造へと戻すと、完全に反転したCDシグナルが観測され、光によって分子集合体のらせんの向きを完全に反転させることに成功した。集合体の構造を原子間力顕微鏡で観察すると、ロッド状のナノ構造を形成していることが確認できたが、らせん構造を可視化することはできなかった。しかしながら、本研究は分子の幾何異性化によって誘起される分子集合が、熱的に促進される分子集合体とは異なった機構によって形成されることを示唆しており、超分子集合体や高分子のねじれの向きを制御する新たな手法の基盤となりうると期待される。
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