研究概要 |
本研究課題では、有機合成化学、超分子化学、あるいは、材料化学の分野において、申請者らが培ってきた知識と経験を最大限に活かし、ピンセット型分子によるフラーレン、カーボンナノチューブ(CNT)の構造識別、あるいは、分離精製について検討を行う。具体的には、ジポルフィリンナノピンセットというホスト分子を設計・合成し、上記ナノ炭素化合物の各種構造体の精緻な識別を行うとともに、欲しい構造体のみを選り分ける方法論を確立する。 平成20年度は、まず、フラーレン(C_<60>,C_<70>)と研究分担者の宇野らが合成した中心金属にNiを有するジポルフィリンナノピンセットとの、錯形成について検討を行ったところ、C_<60>,C_<70>に対して、それぞれ1.5x1^4, 1.9x10^4と非常に大きな錯形成定数を示すことが明らかとなった(S.Bhattacharya,H.Uno,N.Komatsu,et al., Spectrochimica Acta A,2008)。カーボンナノチューブとの錯形成、および形状選択的抽出においては、スペーサー部分を代えて、その選択性に与える影響を検討した。具体的には、これまでに検討してきたm-phenylene, pyridileneスペーサーに代え、carbazolyleneをスペーサーとするピンセット型ジポルフィリンを合成し、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の抽出を行ったところ、(7,5),(8,4)のSWNTsが優先的に抽出され、また、(7,5)の光学純度が他のものに比べ、非常に高いということが明らかとなった(N.Komatsu et al., ACS Nano,2008)。また、分担者の宇野らが合成したキラルなピンセット型ジポルフィリンを用いて、SWNTの抽出を行っているが、現在のところ、抽出には至っていない。一方、より合成が簡便なモノポルフィリン化合物でも、SWNTの選択的な抽出が可能であることも明らかとなった(N. Komatsu et al.,J. Phys. Chem. C,2008)。本検討においては、より大きな直径を有するSWNTが優先的に抽出された。その光学純度は、上記のピンセット型ジポルフィリンを用いた場合に、近い値を示し、また、これまで用いてきたCoMoCATに代え、HiPCOを用いたところ、これもうまく抽出され、光学活性体が得られた。
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