研究概要 |
本研究課題では、有機合成化学、超分子化学、あるいは、材料化学の分野において、申請者らが培ってきた知識と経験を最大限に活かし、ピンセット型分子によるフラーレン、カーボンナノチューブ(CNT)の構造識別、あるいは、分離精製について検討を行う。具体的には、ジポルフィリンナノピンセットというホスト分子を設計・合成し、上記ナノ炭素化合物の各種構造体の精緻な識別を行うとともに、欲しい構造体のみを選り分ける方法論を確立する。 平成21年度、カーボンナノチューブとの錯形成、および形状選択的抽出において、スペーサー部分を代えて、その選択性に与える影響を検討した。具体的には、これまでに検討してきたm-phenylene,2,6-pyridilene,3,6-carbazolyleneスペーサーに代え、3,6-phenanthreneをスペーサーとするピンセット型ジポルフィリンを合成し、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の抽出を行った。その結果、(6,5),(6,4)と直径が0.77nm以下の細いSWNTが優先的に抽出され、一方で、それ以上の径を有する(7,5),(7,6),(8,3),(8,4)-SWNTsは抽出後にその割合が大きく減少した。さらに興味深いことに、(6,5)-SWNTsのみが大きな円二色性(CD)を示した。以上のことから、3,6-phenanthreneをスペーサーとするピンセット型ジポルフィリンを用いた市販のCoMoCAT -SWNTsの抽出により、そこに含まれる多くの(n,m)構造体、あるいはそれらの鏡像異性体の中から、(6,5)-SWNTsの右巻き、左巻き、一方の鏡像異性体のみを選択的に抽出できた、ということが示された。 今後、ポルフィリン中心金属をZnからNi,Cu,Mn,Co,Fe,Pd等の他の重金属に代え、同様の検討を行い、抽出能、選択性の向上を図っていく予定である。
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