本年度は、逆ミセルが形成するナノサイズの水相を反応場として、主にPt-Cu合金担持カーボン(Pt-Cu/C)の調製を行い、電気化学的酸素還元活性を評価した。逆ミセル形成用の界面活性剤としてアニオン性のジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(AOT)が利用できることを明らかにした昨年度の結果をもとに、油相としてデカンを用いAOTが形成する逆ミセルを反応場としてPt-Cu/C試料を調製した。得られたPt-Cu/C試料は室温合成にもかかわらず合金化することが示唆され、さらに、+0.75V (vs.Ag/AgCl)における電流密度が市販の電極触媒に比較して高い値を示し、より高い酸素還元活性を示すことがわかった。ただし、Pt-Cu担持カーボンは酸素還元反応に対する初期活性は高いものの、CV測定を繰り返し行うと酸素還元活性が低下する傾向を示した。また、Pt-Cu/Cを用いて膜電極接合体(MEA)を作製した場合、開回路電圧は高いものの電圧が急激に低下する現象がみられ、合金中に含まれるCuが電解質膜中に溶出した可能性が高いことが示唆された。そこで、Pt-Cu/Cの安定性の向上を目的としてイリジウム(Ir)を加えた三元系触媒、またはその三元系触媒から硫酸処理によりCuを溶出させた触媒を調製し特性を評価した。そ1の結果、Pt-Cu-Ir/Cは市販試料と比較して高い活性を示し、Cuを溶出させることでより酸素還元電流値が高くなることを見出した。また、Pt-Cu-Ir/Cをカソードに用いてMEAを作製したところ、市販試料よりは劣るものの、逆ミセル法で調製したPt-Cu/Cをカソードに用いて作製したMEAと比較して高い発電特性が得られた。従って、Pt-Cu/CにIrを加えることで、安定性を向上でき、高活性なカソード用電極触媒として利用できると考えられる。
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