研究概要 |
本年は中心金属を銅とする四面体配位構造をもつねじれ型単一分子性金属[Cu(dmdt)_2]の低温構造と物性を更に詳しく調べることを目的として、単結晶試料の合成、四端子伝導度測定、13Kまでの低温X線構造解析、ESR測定およびダイアモンドアンビルセルを用いた単結晶高圧下伝導度測定を行った。本年得られた単結晶の室温伝導度は120Scm^であり、以前報告した伝導度(σ(RT)≈3.5Scm^)に比べ非常に大きく、また以前の半導体的な温度依存性と異なり、室温から270Kまで抵抗が温度の低下とともに僅かに減少し、金属的温度依存性がみられた。単結晶X線構造解析を300K-13Kの温度範囲で行なったが、伝導性の大きな違いにもかかわらず、構造は既報の通りであった。本年度、既知構造の結晶のみを一つづつ選別し、多結晶試料を用いてESR測定を行った。その結果以前の測定では明確でなかった100K付近の明瞭なピークを観測する事が出来た。室温付近では線幅が非常に大きいので,強度の詳しい解析は難しいが,200K付近から100Kまで強度は増大し100K付近で最大となり,それより低温で信号強度は消失した。恐らく第一原理計算により予測されこれまで見つかっていなかった反強磁性状態への相転移が100Kで起っているものと考えられる。DACを用い単結晶高圧下伝導度測定を行い高圧下では絶縁化が押さえられ金属的な領域が低温まで広がり、6.OGPaでは1.9Kまで金属状態が保たれることがわかった。
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