我々はこれまでポリHF塩を支持塩兼フッ素源とする環境調和型の電解フッ素化システムの開発し、一連の研究を行ってきた。しかしながら、電解液から生成物を単離する際に中和処理するため支持しポリHF塩は回収されず廃棄されていた。本年度はポリマー塩基とHFとの塩を用いることによりこの問題点を解決しようとした。 1) ポリマー塩基ポリHF塩を支持塩兼フッ素源とする新規電解フッ素化システムの開発: ポリマー塩基ポリHF塩として市販めポリビニルピリジシのポリHF塩(HF含量40%)を用い有機硫黄化合物の電解フッ素化を行った。電解に先立ち、ポリマーは一般に陽極酸化されないことからポリビニルピリジンも陽極で酸化を受けないことをCV測定により確認した。ついで、ポリビニルピリジンのポリHF塩を用い、α-フェニルチオ酢酸エステル類の電解フッ素化をアセトニトリル中で行なった。期待通り、フッ素化は進行したものの収率は10%程度であり、電解条件を種々検討したが、収率は向上しなかった。しかしながら、生成物との分離は通常のアミンのポリHF塩を用いた場合に比べ格段に優れていることが分かった。これはアミン部分がポリマー故に単純にろ過するだけで除去できるからであり、ポリマー塩基ポリHF塩の利点を実証できた。電解フッ素化の収率が低いのはHFの含量が低いためと思われ、現在HF含量の多いもの(60%)を外部に依頼中である。 2) ポリマー塩基ポリHF塩を用いる複素環化合物の選択的電解フッ素化: ベンゾオキサチアノンのような含硫黄複素環化合物を対象にポリビニルピリジンのポリHF塩を用いて電解フッ素化を行なったところ、相応するフッ素化体が生成した。しかしながら、収率は高くなく、これについてもHF含量の多いポリビニルピリジシを用いて収率向上を図る予定である。 3) ポリマー塩基ポリHF塩を用いるオレフィン類のヨードフロリネーション: オレフィン類のヨードフロリネーションについて、ポリビニルピリジンのポリHF塩を用いて検討したところ、ヨードフロリネーションが進行した。収率は20%程度であったが、HF含量の多いポリビニルピリジンを用いれば収率が向上するものと期待され、現在検討中である。
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