本年度は下記の2つのテーマについて研究を行い、計画通り所期の成果を達成することができた。 1.ポリマー担持ヨードベンゼンをメデイエーターとするHF塩イオン液体中での間接電解フッ素化: ポリマーとしてポリスチレンを選択し、これににヨードベンゼンを担持させた新たなメデイエーターを開発した。このメデイエーターはイオン液体に不溶のため塩化物イオンを第2のメデイエーターとして系中に存在させて、ダブルメデイエーター系とすることによりポリHF塩イオン液体中で、ジチオアセタール、チオエステル、フェニルチオ基を有する糖やエチレンカーボナート類など様々な化合物の脱硫フッ素化あるいはジフッ素化を達成した。電解終了後に電解液をを濾過するだけでメデイエーターが回収でき、メデイエーターとHF塩イオン液体が繰り返し電解フッ素化に再利用できることも示した。 2.超音波照射下でのHF塩イオン液体中での無溶媒系電解フッ素化: イオン液体は分子性液体に比べ粘性が高いため電解反応では基質の電極表面への輸送が遅くなり、これが反応律足となることが多い。そこで、モデル基質としてフェニル酢酸エステルを用い、ポリHF塩イオン液体中で超音波照射下におけるCV測定を行ったところ、酸化電流値が大きく増大することから物質移動が超音波照射により顕著に促進されることが分かった。ついで、超音波照射下でマクロ電解を行った結果、フッ素化の選択性と効率が飛躍的に向上することが分かった。さらに、イオン液体中で超音波照射が電解フッ素化の立体化学にも大きく影響し、熱力学的に有利なトランス体がより多く生成することも分かった。このように、超音波照射により、通常の有機溶媒と同様にイオン液体が振る舞うことを初めて明らかにすることができた。
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