昨年度の成果によって得られた(R)-3-ヒドロキシブタン酸と(S)-アスパラギン酸からなる周期共重合体を用いて、その構造、物性解析、および生分解性誘導スイッチ機能の発現を評価した。(R)-3-ヒドロキシブタン酸と(S)-アスパラギン酸からなる周期共重合体はいずれも結晶性の高分子物質であり、その融点は、(R)-3-ヒドロキシブタン酸ユニットの連鎖長が1~3まで伸長するとともに、114℃~91℃まで低下した。また、ガラス転移点は、32℃~14℃まで(R)-3-ヒドロキシブタン酸ユニットの連鎖長の増加とともに変化することを確認した。その後、これら周期共重合体の酵素加水分解試験をポリ[(R)-3-ヒドロキシブタン酸]分解酵素を用いて行った。周期共重合体の酵素分解反応は、(S)-アスパラギン酸ユニットの側鎖分子構造に大きく依存し、側鎖がベンジルエステルの場合には酵素分解が進行しないのに対し、ベンジル基を脱保護することによって分解反応が開始することを見出した。さらに、側鎖をフリーのカルボン酸とした(S)-アスパラギン酸ユニットに有機溶媒中でアルキルアミンをイオンコンプレックスの状態で導入すると、酵素分解反応を抑制できることを明らかにした。一方、このイオンコンプレックス状態で導入したアルキルアミンは、試料を酸性条件下におくことによって容易に脱離でき、酵素分解性を再度獲得できることを確認した。以上の結果より、本研究で得られた周期共重合体が、pHの変化によって生分解性誘導スイッチ機能を発現できることを明らかにした。
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