研究課題
マベガイ真珠層アラゴナイト形成に関与するマトリックスタンパク質のうち、結晶核形成促進因子26kDaADPリボシルトランスフェラーゼ様タンパク質26P-1(HSC2)および26P-2(HSC3)の大腸菌リコンビナント発現系構築のため、市販のベクター(pET,pGEX)、さらにガレクチン融合タンパク質発現系ベクターをもちいて発現したが、細胞毒性(アルギニン特異的ADPリボシルトランスフェラーゼ活性によるポリペプチド鎖伸張因子への作用)のため、リコンビナントを得ることができなかった。また、ジャッカリン様レクチンについては、コンジェリンをタグとした融合タンパク質発現系プラスミドを作成した。また、今回結晶化実験において、PPL2Aがアラゴナイト様結晶形成促進作用を示すことがあきらかになった。ジャッカリン様レクチンの立体構造は、4つのβシートからなる部分が3回軸対称(計12のβシート)のβプリズム構造をとるが、PPL2Aも同様の構造をとると推定され、実際にPPL2に存在するジスルフィド結合のCys残基は(他のジャッカリン様レクチンにはない)、立体構造上近い位置に存在する。またジャッカリン様レクチンの3回軸対称のドメインのうち1つは、N末端側βシート2つとC末端側βシート2つからなる。これまでの研究から、PPL2Aは自己組織化により炭酸カルシウム-タンパク質複合体のマトリックスタンパク質として機能することが示されたが、PPL2Aの構造上の特徴から、N末端側βシートとC末端側βシートのドメインスワップにより自己組織化すると推察された。この構造変化に関わるC末端側βシート構造をつなぐループ上に糖鎖結合部位が存在するため、炭酸カルシウムとともに結晶化に与える糖鎖の影響が考えられ調べた。その結果、予想通りPPL2Aの特異糖であるトレハロースが影響し、結晶数を増加させることがわかった。
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