今年度、hybridizationを利用して特定のRNAを単離する固相化プローブ法の改良法としてカオトロピックな塩であるテトラメチルアンモニウム塩をhybridizationの緩衝液中に加えるという方法を試した。大腸菌のtRNAを単離する条件としては、0.9Mの塩化テトラメチルアンモニウムの存在下、45℃で保温する方法が最も効率よくtRNAを調製できることを見い出した。しかし単離されるtRNAの配列特異性がやや低くなることや古細菌のtRNAは単離後の活性が悪いなどの問題が発覚し、全tRNAの単離にまでは至っていない。今後、活性の高い個別tRNAを得るためには、さらに方法をブラッシュアップする必要があると考えられる。 一方、非天然アミノ酸運搬用のtRNAとアミノアシルtRNA合成酵素の組み合わせ候補としたピロリシンtRNAとピロリシンtRNA合成酵素(PylRS)についてPylRSが市販のリシンアナログであるN-ε-Allyloxycarbonyl-L-lysine (Alloc-Lys)をよい基質とすることが判明した。そこで大腸菌細胞内で構成的にピロリシンtRNAとPylRSを発現させ、Alloc-Lysがタンパク質に導入されるか調べたところモデルタンパク質であるカルモデュリン内のアンバーコドン特異的な部位にAlloc-Lysが導入されていることを確認され、ピロリシンtRNAとPylRSが非天然アミノ酸運搬用のtRNAとアミノアシルtRNA合成酵素の組み合わせとして最適なものの一つであることがわかった。
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