研究概要 |
今年度の研究実績概要は、以下の(1)~(5)のようである。 (1)Anaplasma phagocytophilum菌のPleDタンパク質がdiguanylate cyclase活性を有し、この菌の感染力に大きな影響を与えていることを発見し、さらに本研究で創製した2'-OTBDMS-c-di-GMPが、ヒト細胞HL-60に対するAnaplasma phagocytophilum菌のヒト顆粒球アナプラズマ症感染を阻害することを見出した。(2)c-di-GMPと抗原を処理して免疫力を活性化させたマウスと、同処理をしないマウスに対してメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を感染させたところ、処理したマウスでは、無処理マウスと比較して、生存率が50%上昇する事を見出した。また、本研究における免疫機能発現はIgG1の高い発現によるものであることを突き止めた。(3)c-di-GMPの免疫活性化機能を評価するため種々の実験を行い、c-di-GMPは細胞質内で、TBK1, IRF3, NFkB, MAPキナーゼなどの誘導を伴いながら、これまでに知られていないシグナル伝達経路を経由して、免疫を活性化じていることを明らかにした。(4)N末端側にセンサードメイン、C末端側にdiguanylate cyclaseをもつタンパク質を有する嫌気性菌Desulfotalea psychrophilaにおいて、センサードメインのヘムタンパク質に酸素が結合している場合にのみ、diguanylate cyclaseが活性を示し、c-di-GMP生合成が行われること、また、このタンパク質の活性中心はチロシン55とグルタミン81であることを見出した。この発見は二成分制御系による細菌の環境への応答を示す興味深い発見である。(5)本研究で創製したc-di-GMP誘導体,c-GpAp, c-GpIp, cGpsGpが、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成阻害をはじめ多くの興味深い生理機能を示す事を見出し、これらc-di-GMP誘導体がバイオフィルム感染症への薬剤としでの可能性を示した。
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