研究課題/領域番号 |
20350076
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
早川 芳宏 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50022702)
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研究分担者 |
塚本 眞幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (10362295)
太田 美智男 椙山女学園大学, 看護学部, 教授 (20111841)
山田 景子 名古屋大学, 医学(系)研究科, 助教 (00402561)
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キーワード | 環状ジグアニル酸 / 免疫活性化 / インターフェロン / 機能性タンパク質 / STING / バイオフィルム感染症 |
研究概要 |
本研究の主たる目的(1)環状ジグアニル酸(c-di-GMP)の生理活性探索と(2)同生理活性発現機構の解明のうち、目的(1)においては、c-di-GMPの人工修飾体である2'-O-TBDMS-c-di-GMPがEhrlichia chaffeensis菌においてserine proteaseの活性を阻害し、その結果同菌の感染を妨げる事を発見した(オハイオ州立大学(米)Y.Rikihisaとの共同研究)。また、c-di-GMPはBorrelia brugdoferi菌においてPlzAタンパク質と結合し、同菌の感染力を弱めることを明らかにした(イーストカロライナ大学(米)M.A.Motalebとの共同研究)。一方、目的(2)においては、「c-di-GMPは哺乳動物に存在する機能性タンパク質STING(stimulator of IFN genes)と結合し、同タンパク質の機能発現スイッチをオンにして免疫機能尾を発現させる」ことを以下の様にして明らかにした(カリフォルニア大学バークレー校(米)Russell E.Vanceとの共同研究)。すなわち、まず、何もしないマウスはc-di-GMPを投与すると免疫が活性化されるのに対し、N-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)処理したマウスはc-di-GMPを投与しても免疫が活性化されない事を見出した。この違いは、ENU処理したマウスでは、同処理によってc-di-GMPを受容して免疫を発現するレセプタータンパクが破損されたことに起因するのではないかと推測し、ENU処理によって損壊したタンパク質を探した所、それがSTINGであることを見出した。これを受け、次に正常なSTINGを取り出し、STINGが実際にc-di-GMPを受容するか否かをin vitro実験で確かめた所、STINGはc-di-GMPを受容する事が分かった。さらに、c-di-GMPを受容したSTING(c-di-GMP/STING複合体)は、免疫機能発現の証拠となるインターフェロンを生産する事も分かった。すなわち、c-di-GMPのレセプターはSTINGであり、c-di-GMPはSTINGに取り込まれると同タンパク質の免疫機能発現スイッチをオンにする事を明らかにした。この発見はc-di-GMPによる免疫発現に関わるレセプタータンパク質がSTINGであることを世界で初めて特定したもので、c-di-GMPがもつ生理活性のなかでも特に重要視されている免疫誘起・活性化の機能発現機構解明の鍵になる重要な発見と言える。
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