研究課題/領域番号 |
20350077
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 紀子 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90199290)
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研究分担者 |
森本 幸生 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (80200450)
杉山 正明 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (10253395)
木野内 忠稔 京都大学, 原子炉実験所, 講師 (90301457)
齊藤 毅 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (10274143)
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キーワード | 蛋白質の異常凝集 / 白内障 / 老化 / ラセミ化 / 紫外線 / 加齢性疾患 / D-アミノ酸 / 皮膚の光老化 |
研究概要 |
本研究の目的は「加齢による蛋白質の異常凝集化は蛋白質構成アミノ酸のD-体化が引き金である」という仮説を証明し、D-Aspを分子指標として体内の様々な部位で共通して生じている種々の蛋白質の異常凝集を統一的に理解することである。 平成23年度は下記の項目について研究を行った。 1)蛋白質中で生じるD-β-Asp部位の立体構造上の特性 老人性白内障の水晶体から得たβB2-クリスタリンのN末端部位にAsp残基のD-β-体化部位を見出し、その部位を初めて特定、した。D-β#化し易いAsp残基は立体構造上、表面に曝されたフレキシブルな構造部分であることを初めて明らかにした。 2)水晶体以外の眼組織におけるD-β-Asp含有蛋白質の検出 我々が開発したD-β-Asp含有蛋白質抗体を用いた免疫組織染色により水晶体以外の複数の眼の組織(網膜、角膜など)でもD-β-Asp含有蛋白質が存在していることを見出した。D-β-Asp含有蛋白質はいずれも加齢に伴って生じる凝集沈着物質内に存在し、加齢性黄班変性や糖尿病など新たな疾患との関連が示唆された。 3)加齢や紫外線照射によって生じる皮膚のD-β-Asp蛋白質中の同定 我々は以前の研究でD-β-Asp含有蛋白質抗体をプロiブとした免疫組織染色により老人の顔の皮膚にD-β-Asp含有蛋白質が多量に蓄積していることを見出した。今回はマウスの皮膚に紫外線を照射し、紫外線照射量に依存してD一β-Asp含有蛋白質が増加することを免疫組織染色で確認し、その蛋白質は表皮のケラチン蛋白質である事を質量分析で決定した。また、D-β-Asp化しているケラチンは紫外線照射量に依存して非酵素的な糖の付加も同時に生じていることが明らかとなった。 4)Asp異性体を含むペプチドの迅速分析法の開発 1-3の課題を効率よく進めるための質量分析を用いた分析法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)βB2-クリスタリン中のD-β-Asp残基の部位の特定は初めての報告である。 2)D-β-Lsp含有蛋白質が広く加齢性疾患に蓄積しているということがわかったので、今後D-β-Aspが様々な加齢性疾患の分子指標となり得る可能性を示している。 3>紫外線照射によってケラチンはD-β-Asp化と同時に非酵素的な糖付加が生じると言う意外な結果を得た。 4)質量分析による新たなAsp異性体を含むペプチドの迅速分析が確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
蛋白質中のD一β一Asp残基の微量迅速分析法の開発をさらに推進する。従来法とは異なる迅速簡便な定量法を確立させる。それにより従来分析が困難であった不溶蛋白質の分析が可能となり当該分野は飛躍的に進展することが期待できる。
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