本年度は、まずミオグロビンポリマーをさらにクロスリンクさせて、巨大なタンパク質クラスターを作成することを実施した。具体的には、ミオグロビンポリマーに過酸化水素を添加することにより、3次元のタンパク質クラスターを得た。このクラスターも本来のミオグロビンの酸素保持能力を十分に要していることが明らかとなり、今後のバイオナノマテリアル創製に向けて、有意義なデータが得られた。 次に、ミオグロビンとストレプトアビジンの超分子交互共重合体の合成を試みた。アビジンの補因子であるビオチン分子をヘムの末端に修飾し、そのヘムをミオグロビンアポ2量体(システインを表面に有するミオグロビン変異体のジスルフィド結合を介した2量体をアポ化したもの)に挿入した再構成タンパク質をまず調製し、その上でストレプトアビジンを添加することにより、ミオグロビン-アビジンが交互に並んだ超分子タンパク質ポリマーが得られた。この共重合体はAFM(原子間力顕微鏡)とQCM及びゲル排除クロマトグラフィーによって、確認した。このような、タンパク質の交互結合による自己組織化集合体形成を実施した例は、今までになく、今後のユニークな生体材料に応用可能と考えられる。 さらに、昨年度に引き続き、ヘムタンパク質ポリマーを金基板あるいは金コロイドに修飾する手法を検討し、光電変換素子や金コロイドの自己組織化集合体形成を実施した。特に、タンパク質ポリマー集積金基板については、その表面をAFMで観測することに成功し、金基板表面のタンパク質ポリマーの構造が明らかとなった。また後者では、金属コロイドが非常に綺麗に空間的に並ぶことがTEM(電子顕微鏡)から明らかとなった。
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