21年度は、サイトカイン類(天然型エリスロポエチン:EPO)とIgG-Fcの合成の検討を20年度に引き続き行った。EPOの合成研究においては、新規なペプチドチオエステル法を確立することができた。すなわち、ペプチド鎖のC末端にCys-Gly配列を含む糖ペプチドチオエステル(Pepetide-X-Cys-Gly : Xは標的ペプチドのC末端のアミノ酸)を固相合成により調製後、Cysのチオール基を炭酸エステル化し、そしてグアニジン処理することでCys-Gly配列の脱離を伴ってPepetide-X-グアニジン誘導体を得ることができた。続いてこの誘導体をアルキルチオールで処理することで目的とするPepetide-X-SRを得ることに成功した。また、この方法を用いて、ヒト複合型糖鎖をもつEPOの糖ペプチドチオエステルセグメントを合成することにも成功した。22年度は、この方法を利用して天然型のEPOの合成を引き続き検討する。IgG-Fcの合成は、ホモダイマーであるので、一方のフラグメントを作り2量化し、抗体のアフィニティーカラムProtein-A等で精製できるものを単離するという趣旨で合成の検討をおこなった。Fc部位は、重鎖の229-444番目が相当し、複合型糖鎖は、その297番についている。そこで、HisTag-メチオニンをN末端にもつCys321から444ペプチドセグメントを大腸菌発現で調製し、そしてHIsTagカラム、CNBr処理をすることにより、Cys321から444ペプチドセグメントを得た。また、アシアロ糖鎖を297位にもつ糖ペプチドチオエステル(Cys293-Lys320)を固相合成により調製し、大腸菌で発現した長鎖ペプチドとライゲーションすることで293-444の糖ペプチド鎖を得ることに成功した。229から292位のペプチド鎖は、2つのセグメントにわけて調製し、そして293-444までの糖ペプチド鎖とライゲーションを行い全長を得た。しかし、この方法では、必要量のタンパク質を得るには問題があったので、22年度は、21年度に新規に開発したペプチドチオエステル法を利用して検討する予定である。
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