糖タンパク質を合成するには原料となる糖ペプチドチオエステルを合成することが重要であり、これまで酸加水分解されやすい糖鎖をもつ糖ペプチドチオエステルはFmoc法で合成されていた。本研究では、ペプチドチオエステルをHFを用いないBoc法で合成できることを見出しその量産をすることに成功した。 天然型エリスロポエチンの合成:酸に弱いシアル酸をもつシアリル糖鎖ペプチドチオエステルの合成も検討を開始しエリスロポエチンの全合成研究をおこなった。全166アミノ酸配列のうち、糖鎖を含む領域以外のペプチドチオエステルをBoc法で構築することに成功した。また、C末端側の98-166位のペプチド鎖を融合タンパクとして新規に発現し得ることに成功した。また、複合型のシアリル2分岐糖鎖を3本ハロアセトアミド法で連結した1-32位までの糖ペプチドチオエステルとCys33-166位までを大腸菌発現により調製したものをnative chemical ligationで連結後foldingさせることでin vitroで細胞増殖活性のあるエリスロポエチン誘導体の合成に成功した。 糖タンパク質IgFcの合成:Fc部位は、重鎖の229-444番目が相当し、複合型糖鎖は、その297番についている。この全長合成は本科学研究費の21年度に成功しているが最終生成物の構造解析が量が少ないために出来ていない。量産するために、ペプチドチオエステルをBoc法で構築する検討を行い、目処をたてることができ、全合成完了に向けて最終検討をおこなっている。 新規糖タンパク質の合成:T細胞上の共刺激糖タンパク質(アミノ酸120個、2分岐複合型アシアロ糖鎖が89位に結合)の全化学合成に成功した。この89位の糖鎖の機能を調べたところタンパク質の3次元構造維持に必須であるというデータを単一構造の糖タンパク質を用いて確認する事に成功した。
|