本研究では、酸素分子のキャリアーとして働くヘモシアニンの機能を積極的に改変して、酸化反応や酸素化反応を司るオキシダーゼ(酸化酵素)やモノオキシゲナーゼ(一原子酸素添加酵素)に変換し、これを利用した新しいタイプの環境調和型酸化反応触媒の開発を目指して検討を行っている。本年度の研究成果は下記の通りである。 (1)生きたマダコ(軟体動物)やワタリガニ(節足動物)の血液から超遠心分離法とゲル濾過法を用いてヘモシアニンの超分子集合体を単離・精製し、原子吸光分析法を用いて金属の含有量を決定した。 (2)得られたヘモシアニンの超分子集合体に尿素などの変性剤を作用させ、酸素結合部位を複数個含むサブユニットまで解離させ、ゲルクロマトグラフィーなどにより単離・精製し、分子量や金属含有量および純度を決定した。 (3)超分子集合体から解離させたサブユニットをさらに、トリプシンやV8プロテアーゼなどの加水分解酵素と作用させ、分子状酸素の結合部位(タイプ3銅活性中心)を1つだけ含む、最小活性ユニットを切り取り、各種クロマト法を用いて単離・精製した。これについても、原子吸光分析法などを用いて金属の含有量を測定し、純度を決定した。 (4)得られた最小活性ユニットの分光学的特性や安定性、および外部基質との反応性について検討し、天然のヘモシアニンと比較した。その結果、酸化活性の大きな向上が認められた。
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