DNAやRNA配列の染め分け、つまりマルチカラー核酸解析は、核酸の同時多項目解析の原点としてどうしても確立したい技術であり、それが可能になれば、核酸計測に基づくさまざまな新しいサイエンスへ応用可能である。 本年度は、励起子制御機構にのっとった色素群を開拓し、それらを用いた新規核酸多色染め分け法へと展開した。また、蛍光発光の光駆動系への展開も行った。これまで検討されてきたプローブは、チアゾールオレンジ色素の励起子結合効果を利用している。この構造をもとにして400~700nmの発光波長領域を持つ色素群を設計・合成した。設計するチアゾールオレンジ誘導体として、キノリン環やベンゾチアゾール環の共役系を拡大させた色素群やメチン部位を伸長した色素群などを合成した。これらを核酸に導入して、励起子制御プローブとして機能することを確認した。また、近赤外領域の機能する色素修飾ヌクレオチドも開発した。色素単体で、その集合体形成によって励起子結合効果が現れることは、前年度の研究によって、いくつかの種類で既に確認しているが、その中から特に良く機能するものを発光波長も含めて勘案しながら吟味・選択し、プローブ化することができた。多色の励起子制御プローブが完成したのでは、それぞれ異なる配列に異なる波長の色素標識ヌクレオチドを導入することにより、標的配列ごとに各色で核酸を染め分ける方法へと展開した。また、光照射によって初めて核酸認識機能を生じるプローブも作成した。
|