分子サイズを厳密に制御した分岐型のスルホン酸化ポリイミド電解質を設計、合成した。具体的には、2つの異なる方法(反応性末端基が異なる2種類の分岐型オリゴマー前駆体を使用)によって分子末端にスルホン酸基を有する分岐型のポリイミド電解質の合成に成功した。IECは計算値に比べ若干低い値であったが、ほぼ設計通りの分子量を持つ電解質が得られた。分岐型のポリイミド電解質は水やアルコールへ良く分散し、直鎖の炭化水素系電解質溶液に比べて低粘性の溶液とすることができた。また、分子量を制御した5量体、50量体、285量体のSPIオリゴマーを新たに合成した。得られたオリゴマーの導電性および含水率は、分子量低下とともにいずれも若干低下することが明らかとなった。 これらのSPIオリゴマー電解質を電極触媒への被覆を検討した。分子量の異なる各SPIを電極触媒層用バインダーとし、スクリーン印刷機を用いて電極触媒層を作製、Nafion NRE212膜と組み合わせ膜電極接合体(MEA)を作製した。窒素吸着法による触媒層の細孔分布測定の結果、目的通り分子量の低下に伴い、細孔内部までバインダーを導入することが可能となった。次に、各MEAを単セルに組み込み、サイクリックボルタンメトリーよりその電気化学活性表面積(ECA)を算出した。バインダー量の増加に伴いECAは増加したが、分子量とECAの間には明らかな相関は観察されず、低分子量化に伴う触媒利用率の向上は観測されなかった。バインダーの被覆厚減少によるプロトン導電パスの減少が原因と考えられる。現在、SPIオリゴマー電解質の特徴を活かしたMEAの調製法と運転条件についての詳細な検討を進めている。
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