研究概要 |
種々の特殊反応場で特徴ある無機物質材料の創出を試みた。超高真空を用いる薄膜系では、30K級の高い転移温度をもつことが知られている超伝導体Ba_<1-x>K_xBiO_3の薄膜を合成し、基板の効果で物性制御することを試みた。Ba_<1-x>K_xBiO_3薄膜を種々のxにおいてMgO,SrTiO_3基板上に成長し、格子歪みについて検討した。どちらの基板でも、大きく張力のかかった薄膜が生成した。これは、酸素欠陥を伴い基板上に膨張した状態で成長した薄膜が酸素中アニールにより収縮したためと考えられる。今後、応力と物性の関係を調べていく。水熱合成条件を用いる多孔体系では、酸化チタン微粒子を結晶性多孔体であるゼオライトと複合化した新しいタイプの光触媒材料の開発を試みた。微粒子の周りにゼオライトを成長させる場合、ドライゲルコンバージョン法が適していることがわかった。このように合成した複合体は気相の2プロパノールを高活性で光触媒分解できた。さらに分子性化合物の系では、モリブデンクラスター塩化物の有機塩基塩が、アルコール吸収脱離により3次元的な構造とクラスター分子が層状に配列した異方的な構造の間を可逆的に変化した。層状の構造はマーデルングポテンシャルの観点からは不安定であるはずであり、吸収された分子、有機塩基分子と無機クラスター分子間の相互作用が層状ナノ構造を安定化していると考えられる。メカニズムの詳細は今後の課題であるが、これは、分子性イオン結晶を用いたナノ構造の構築に新たな視点を与えるものである。以上、初年度において種々の特殊反応場を用いたナノ構造の構築に関していくつかの端緒を得ることができた。
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