研究概要 |
本年度は、主に(1)酸化チタン多孔体複合光触媒系,(2)Ba_1-xK_xBiO_3(BKBO)薄膜の基板界面の効果による構造制御,(3)逆ReO_3型窒化物への異元素導入,および(4)窒化ホウ素(h-BN)薄膜合成を行った.(1)の複合光触媒は,酸化チタン結晶粒子とそれを被覆している多孔体が,光触媒機能と吸着機能をそれぞれ分担しその階層構造中において機能面で複合化した機能階層化材料である.結晶粒子と多孔体の界面が性能を決める鍵であるが,本年度,結晶粒子を表面修飾してから複合化することにより光触媒性能が大幅に向上することが示唆された.今後,界面に関する情報を得るためにも速度論的検討も視野に入れる.(2)のBKBO薄膜については,前年度基板からの応力のかかったエピ膜合成に成功していたが,安定に超伝導特性を得ることが困難であることが分かった.PLD法では,Kの蒸発を補うためKフラックスを他の元素比を変えずに制御することが難しく,次年度は合成法を根本的に見直す.すでに予備的な成果が得られている.(3)の逆ReO_3型窒化物としてCu_3Nを用いたが,高圧下においても200~300℃の低温で分解し窒素を放出することがわかった.異元素の挿入は困難であったが,低温で使用可能なin-situ窒素源としてCu_3Nが利用できる可能性が示された.さらに,(4)のh-BN薄膜合成では,スパッタ法によりh-BN薄膜を合成し,赤外ATRと反射赤外法,X線回折を用いて構造の解析を行った.赤外ATRで通常の吸収スペクトルでは現れないシグナルが観測され,これはLOモードに帰属されると思われるが,確定的ではない.長距離秩序,短距離秩序との関係をさらに調べる必要がある.
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