研究概要 |
本研究では,系を特徴づける分子レベル,ナノレベルあるいはそれ以上のレベルの階層同士が機能面で絡み合っている系を,「機能階層系」と定義する.また、本研究では特殊反応場として、(1)超高真空を用いた単結晶薄膜合成,(2)超高圧,(3)水熱合成およびナノ多孔体構造の利用に加えて、(4)溶融塩中での電解合成を活用する。酸化チタン結晶粒子がメソポーラスシリカに包含された階層構造の光触媒作用による気相有機分子の分解を行い、吸着能と有機物分解能の関係を調べた。溶融KOH中の電気化学合成により、白金電極上に成長させたBa_<1-x>K_xBiO_3において、成長途中で溶融塩の組成を変化させ結晶内に接合界面を形成した試料の組成と超伝導について検討した。BaOHを結晶成長途中で添加しxの値を変化させ磁化の温度依存性を測定すると2種の超伝導応答が現れた。詳細に検討した結果、接合界面に形成されるごく薄い層の超伝導が反磁性応答に大きく反映していることが分かった。さらに、接合界面の外側の結晶相は、下地の格子定数に近づくようにKOH中にわずか(0.5%以下)に含まれるNaをBiサイトに取り込むという、下地の効果が成長する結晶相の組成を大きく変化させる界面の顕著な効果が観測された。微量なNaを取り込む効果は、BiをSbに変えたBa-Sb-O系でもみられ、電気化学合成で得られたペロブスカイト酸化物は、BサイトのSbの一部がNaに置換した化合物であることがわかった。一方、ペロブスカイト構造ではないが、高温高圧合成により新化合物BaSbO_3を合成できることを見出した。窒化物薄膜では、PLD法によりMgO基板薄膜合成法を用いることにより立方晶MnNがエピタキシャルに成長した。この膜をX線回折、XAFS、電子線回折などを用いて詳細に解析した結果、このエピ膜は格子定数の異なる2種のMnNからなることが分かった。
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