研究課題
本研究では、無機ナノストランドという極細のファイバーを合成し、その表面を分子精度でコーティングすることで、優れた材料特性をもつナノ複合ファイバーを製造する。また、このファイバーを薄膜化することで、ナノ分離膜としての工学的応用を目指す。さらに、化学プロセスに不可欠な耐久性(熱、酸、有機溶媒に対する安定性)を実現する。これによりナノ薄膜に革新的な分離機能を発現させ、21世紀の人類が遭遇する諸問題を解決することを目指す。21年度は、精密濾ろ過を用いて水酸化カドミウム(または水酸化亜鉛)のナノストランドの水分散液をろ過することで、極薄のナノストランドシートを形成させ、このシートを用いてナノ粒子やタンパク質、架橋高分子などをろ過するプロセスを開発した。十分に発達したナノストランドのシートは、直径が5ナノメートル程度のナノ粒子をろ過できる限外ろ過膜の性能を有し、表面が著しく平滑で、水の透過速度が非常に大きい。このため、表面がアミノ基で修飾された直径15ナノメートルのポリスチレン粒子を用い、ナノストランドシート上に80ナノメートル程度の極薄のフィルターケーキを形成させ、これを架橋固定化することで、化学的に安定な限外ろ過膜を作製した。このナノ粒子の膜は、市販の限外濾ろ過膜の10倍以上の流束で、直径2.5ナノメートルのタンパク質(チトクロムC)を100%分離することが可能であった。さらに、ナノ粒子のサイズを選択することで、限外ろ過膜の除去性能を正確に制御できることが明らかとなり、工学的な応用への大きな可能性が示された。
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