研究課題
結晶性高分子であるアイソタクチックポリプロピレンを種々の圧力の超臨界二酸化炭素雰囲気下で延伸して、その変形過程の詳細をin-situでの応力-歪み測定、得られた延伸試料の結晶高次構造を小角X線散乱(SAXS)測定により調べた。大気圧で延伸すると、歪み20%程度で降伏点が現れ、応力が低下し(歪み軟化)、その後で徐々に応力が増加する(歪み硬化)。延伸試料のSAXS像は歪み100%の歪み硬化が生じる領域まで延伸すると円形から円弧状の散乱像へと変化するが、歪み100%から300%へと延伸したにも関わらず、散乱像にほとんど変化がないことが見出された。この結果から、大きな延伸にも関わらずラメラスタック内のラメラ間非晶領域やラメラ晶の変形が生じることなく、ラメラスタック間の非晶領域のみが変形することが明らかになった。超臨界二酸化炭素雰囲気下で延伸を行うと、降伏点において応力の低下することが見出された。二酸化炭素下で得られるラメラ晶による円形および円弧状のSAXS像が大気圧下で得られるものと大きな違いがないことから、大気圧下と超臨界二酸化炭素下での力学挙動の違いはラメラ晶の変形の違いによるものではなく、二酸化炭素の含浸により非晶鎖が配向しやすくなったためであることが示唆された。二酸化炭素下では歪み硬化した試料において延伸方向に対して垂直方向に長くて強度の強いSAXS像が得られることが見出された。このSAXS像の解析結果から、大気圧下の延伸により形成されないサイズが数十nmの微細なナノ空孔が超臨界延伸により形成されることが明らかになった。
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