研究課題
自然界の中には色素による発色ではなく蝶や鳥などの生物が有する構造色によって色を呈するものがある。近年、この構造色の色材への応用が期待されている。人工的に作製できる構造色を示す材料としてサブミクロンのコロイド粒子が3次元的に周期構造を形成することで得られるコロイド結晶がある。このコロイド結晶は特定の波長の光がブラッグ反射に由来した構造色を示す。しかし、このようなブラッグ回折に起因する構造色は入射光と観察する角度に依存して色合いが変わるので、色材や表示デバイスとして用いる際に不都合が生じることもある。本研究において、申請者は、メタクリレート誘導体である2-(2-methoxyethoxy)ethyl methacrylate(MEO2)をバルク重合することで得られるポーラスなゲルが、特定の溶媒中において角度依存性のない構造色を示すことを発見した。ゲルはトルエン中で膨潤させると青色を呈した。透過スペクトルおよび反射スペクトル測定では可視光領域にピーク(λ)を持つ透過率変化が観察され、この発色の原因が構造色であることが分かった。また試料面に対して垂直から40°の角度範囲において透過スペクトル測定を行ったところ、透過スペクトルのλの位置がほとんど変化しないことから角度依存性のない構造色を示すゲルであることが明らかとなった。様々な組成のトルエン-アセトン混合溶媒(屈折率1.482〜4.497)中においてゲルを膨潤させたところ、屈折率の上昇に応じてゲルの色は、黄色、橙色、桃色、赤色、青色と変わり、透過スペクトルのλも可視光領域で大きく変化することがわかった。SEM観察より5μm程度パターンをもつポーラスな構造が観察された。ある波長を境にその前後で光の散乱強度が増大する現象が観測されたことから、クリスチャンセンフィルター効果より構造発色を呈しているものと考えられる。このゲルは角度依存性がなく、任意の形に形成することが可能で、ランダムな構造を長期間安定に維持できることから色材としての応用が期待できる。
すべて 2009 2008 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件) 図書 (6件) 備考 (1件)
Adv. Mater. 21
ページ: 1-4
The Chemical Record 9
ページ: 87-105
Chemical Communications
ページ: 4735-4737
Angew. Chem. Int. Ed. 47
ページ: 9039-9043
ページ: 5227-5229
http://web.mac.com/ytakeokal/home/About_Gels.html