研究概要 |
本研究における目的は、角度依存性のない構造色を示すソフトフォトニック結晶を作ることである。最終年度に当たる22年度では、最初に、ソフトフォトニック結晶を作る上で重要となる"力学的に優れたソフトマテリアル"の調製とそれを利用した電場応答性ソフトフォトニック結晶の開発に取り組んだ。"力学的に優れたソフトマテリアル"調製には、架橋点が自由に動くことのできる架橋剤を合成し、多岐に飛んだビニルモノマーと反応可能であり、既存のゲルを力学的に非常にソフトにできることを明らかにした(Imran et al. Macromolecules 43, 1975, 2010, Transactions of the Materials Research Society Japan 35, 291, 2010, Transactions of the Materials Research Society Japan 35, 841, 2010)。また、微粒子状に加工することも可能であり、ソフトな微粒子が形成するアモルファス構造の調製方法も確立した。ソフトな微粒子が形成するアモルファス構造を有する膜から角度依存性のないフォトニックバンドギャップ(PBG)が観測されることも見出している。さらに、ソフトな微粒子にイオン基を導入することで、電場応答性も付与することができ、微粒子の集合体から観測されるPBGの位置が印加電圧に応じて可逆に変化しうることも分かった(Ueno et al. J.Mater. Chem. 19, 4778, 2010)。しかし、ゲル微粒子集合体から観測されるPBGを起源にした構造色は、シリカ微粒子と空隙からなるコロイド結晶から観測される構造色と比べて淡いことから、より屈折率の高い材料を内部に有する微粒子を開発し、そのアモルファス状集合体を調製できれば、鮮やかな構造発色性材料となると考えた。そこで、本年度の後半では、シリカ微粒子をコアに有し、刺激応答性高分子からなる高分子ブラシをシェルに有することで、高い屈折率と刺激応答性を併せ持つ"比較的柔らかな微粒子"の開発に着手している。刺激応答性高分子の密度を自由に変えて高分子ブラシを調製する手法は確立できた(Suzuki et al. Macromolecules 43, 9945, 2010)ので、今後は、"比較的柔らかな微粒子"の合成およびそのアモルファス集合体の調製に取り組んでいく。
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