研究概要 |
設定した課題をほぼクリアできた。具体的には以下の通り。1)異方性配向材料の作製○22年度はパルプ/フィラー系の検討を行った。パルプ繊維のルーメンにナノオーダーの鉄を導入することに成功した。その鉄パルプ複合体を用いて、紙漉きを行った。その際に磁場を印加することにより、パルプ繊維を2次元的に並べことに成功した。その複合材料の力学物性を評価すると、繊維の配向方向と垂直方向で明白な力学特性の違いを観測し、異方性循環型素材をベースとした高次元異方性複合材料の創製に成功した。○セルロース/合成高分子系の検討を行った。種々の大きさの微細化セルロースをUV硬化モノマーに懸濁させ、セルロースミクロフィブリルの3次元配向を試みた。その結果、磁化困難軸配向には成功したが、磁化容易軸と磁化中間軸の配向制御は困難であった。完全な三次元配向を成功させるためには、セルロースミクロフィブリルの更なる微細化が必要であることが判明した。セルロース系材料は,環境調和型循環材料として,その利用拡大,高度利用が益々期待されているなか、セルロース結晶の持つ力学特性を利用した高次元異方性複合材料の創成に成功したことは、意義があると考える。2)配向メカニズムのin-situ観察:20年度に製作した磁場下in-situ XRD測定装置により、セルロースの微細化と磁化率異方性との関係を明らかにした。即ち、種々の条件を変えて、セルロースを微細化させた。そのセルロースマイクロクリスタル懸濁液に磁場を印加することにより、配向をその場観察した。その結果、セルロースの微細化により、磁気異方性が大きくなることが判明した。また、見かけの磁化率の異方性の測定に成功した。良好な配向構造を達成するためには磁場配向メカニズムの理解が欠かせないが、今回セルロースミクロフィブリルの配向メカニズムの解析を磁場下in-situ XRD測定により成功した。この手法及びセルロース材料での配向メカニズムの解析はこれまで開発されておらず、意義がある研究であった。
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