本研究では、高スピン偏極特性、かつ低(ゼロ)磁気モーメント性を併せ持つ、高機能なスピン制御材料を創製すること、並びにそれらの材料で構成される積層型ナノヘテロ構造を用いて新規なスピントロニクスデバイス機能を探求することを目的とした。 まず、ハーフメタル反強磁性体の有力候補である二重ペロブスカイトSrLaVMoO_6エピタキシャル薄膜の作製とその物性解明を行った。価数変化が生じやすい二種類の遷移金属元素を含むため単相薄膜成長が困難なSrLaVMoO_6に対して、酸素分圧の精密制御と二段階成長により高品質なエピタキシャル薄膜を実現した。その(111)エピタキシャル成長薄膜の特性評価から、バルク試料より反強磁性ネール温度の大幅な向上を見出すとともに、光電子分光によりハーフメタル電子構造の証拠を得ることに初めて成功した。また、ナノヘテロ構造の界面ハーフメタル性の直接的検証方法として超伝導NbN接合法を開拓し、この方法を用いることにより界面での伝導機構(トンネル伝導とアンドレーエフ金属伝導)に依存した二種類のスピン分極率の定量化が可能なことを明らかにした。本研究は、従来理論予測に留まっていたハーフメタル反強磁性体の存在を実証するとともに、そのナノヘテロ構造の作製・評価手法の開拓を可能にした研究成果であり、ハーフメタル反強磁性体やその関連材料の今後の新たなスピントロニクス応用への可能性を広げるための重要な指針となる。
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