研究課題
本研究の目的は、同一の試料から測定時間・範囲・波長・測定方法等を変化させた複数のX線回折データ(マルチデータ)を測定し、単一の回折データでは得られない分光学的情報(波長変化)・広いダイナミックレンジ(時間変化)・拡張された角度・実空間分解能(範囲変化)を各データ間の差異から引き出すマルチデータ構造解析法を開発することにより、従来のX線構造解析では得られない微弱なDisorder構造などの機能と密接にかかわる詳細構造を解明することである。最終年度となる本年度は、開発を進めてきた手法の実際の構造研究への適用と、これまで行ってきた成果の報告を主に行った。たとえばSPring-8に納入された単結晶IPカメラで測定したLi内包C_<60>フラーレンの構造決定に対して、粉末回折用ソフト開発で培ってきた剛体近似、球殻近似、回転・揺動温度因子などを用いて解析することでその金属内包構造を決定した。また、複数の粉末回折データの同時解析法により得たダイヤモンドの結晶構造因子に対して、超精密解析法である非調和熱振動解析、電子密度の多極子展開解析などを適用し、粉末のマルチデータからこれらの情報が十分な精度で得られることを示した。成果報告は、国内外の学会、研究会にて平成22年度だけで合計6件の招待講演を行っている。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Acta Crystallographica.Set A.
巻: 66 ページ: 458-469
Inorganic Chemistry
巻: 49 ページ: 6740-6747