4H-SiC上へのアイソポリタイプ成長により得られる通常とは異なる結晶構造を持つAlN(4H-AlN)を利用した深紫外発光デバイスへの展開を目的として、(1)4H-AlGaN混晶の成長技術、(2)4H-AlN/4H-AlGaN量子井戸構造の作製とその評価、(3)4H-AlNへの不純物ドーピングに取り組んだ。最終年度の今年度は、(2)、(3)を中心に取り組んだ。(1)については、系統的な実験結果を整理し、また、詳細な評価を行うことで、(11-20)面上においてGaの取り込みが著しく少なくなる現象論的モデルを確立した。(2)については、これまでに確立した条件により、(1-100)面において量子井戸構造の作製に成功し、井戸幅に応じた発光シフト(量子閉じ込め効果)を確認し、また、無極性面量子井戸で期待される発光ピークが励起強度に依存しないこと(内部電界フリー量子井戸)を実現した。さらにAlGaNの成長が困難な(11-20)面で深紫外発光を実現する方法として、AlN/GaN短周期超格子の作製を試み、高品質な超格子構造の成長に成功し、強い深紫外発光を得た。(3)に関しては4H-AlNへのSiドーピングを試みた。対象資料として通常の結晶構造の2H-AlNへのSiドーピングを行い、比較検討を行った。無極性面では全般的に不純物が取り込まれやすいという傾向は得られたが、電気的、光学的に有意な結果を得るには至らなかった。酸素のバックグラウンドドーピングが大きいため、それに埋もれてしまったものと考えている。MBE装置の不純物管理(脱ガスやベーキング)をこれまで以上に徹底し、(成長温度を高くすると酸素の取り込みは減ることが分かっているので)より高い成長温度での系統的な実験を将来的には進める必要があると考えている。
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