研究課題/領域番号 |
20360010
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
夛田 博一 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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研究分担者 |
山田 亮 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
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キーワード | 有機半導体 / 有機エレクトロニクス / 有機スピントロニクス / スピンバルブ / スピン注入 / 界面 |
研究概要 |
現在のコンピューターは.電源を切るとそれまでの「記憶」が失われる。そのため.情報を磁気記録メモリー(ハードディスク)に記録し.電源を入れた際に.その情報を読み込むことが必要となり.起動に時間を要する。この問題を回避するため.不揮発性のメモリーや演算素子の開発が急務となっており.スピントロニクス分野の研究に大きな期待が寄せられている。材料面では.磁性金属に加え.強磁性を示す酸化物や半導体が設計・開発され.演算素子への展開が期待されている。一方.有機材料のスピントロニクスへの応用も注目を集めている。長距離のスピン輸送能が期待されることに加え.簡便な方法で回路の描画ができることも期待を膨らませている。 今年度は、強磁性電極/有機半導体/強磁性電極の積層型構造を作製し、磁場中での電気抵抗を調べた。その結果、磁気抵抗の符号が、有機半導体の種類および膜厚によって変化することを見出した。すなわち、N型有機半導体(C60やアルミニウムキノリウム錯体)を挟んだ場合は、膜厚が薄くても厚くても、負の磁気抵抗(両強磁性電極の磁化の向きが反平行時に抵抗が小さくなる)を示すが、P型の有機半導体(ペンタセン、フタロシアニンなど)を挟んだ場合、薄い場合は、負の磁気抵抗を示すのに対し、厚い場合は、正の磁気抵抗(両強磁性電極の磁化の向きが反平行時に抵抗が小さくなる)を示した。このことは、膜厚が十分大きい場合は、最高占有軌道(HOMO)(P型半導体の場合)および最低非占有軌道(LUMO)(N型半導体の場合)が、スピンの輸送に関与していることを示唆しており、有機スピントロニクスにおける分子設計指針に重要な知見を与えた。
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