研究概要 |
(1)数十~百ミクロンの巨大ベシクルを作製し、ベシクル内でのマイクロドメイン構造の作製に成功した。形成さたマイクロドメインは、秩序液体相ドメインであり、液晶相より、1.2nmほど高く、Raft様構造を形成している。タンパク質の局在化制御はこれからであるが、巨大ベシクルにモデルタンパク質であるグラミシジンAを埋め込み、ベシクル内部にpHプローブを内包させ、酸、またはアルカリを投与した場合、グラミシジンAを通過してベシクル内に入ってきたイオンにより、ベシクル内のpHが変化、結果として蛍光変化が観測された。これにより、巨大ベシクルが強くシールされていること、埋め込まれたモデルタンパク質が機能することが明らかとなり、この手法での機能計測が可能であり、本年度の目標である神経系受容体タンパク質埋込のための再構成条件を確立することができた。また、再構成した受容体タンパク質のAFMによる構造観察にも成功した。今後、受容体タンパク質を埋込み、機能計測を行う予定である。 (2)ナノホール型デバイスでは、プロテオリポソームまたは、巨大ベシクルを用いてナノサイズの穴の上にラプチャーすることで、脂質二分子膜に再構成したタンパク質を配置する手法を確立することができた。位置制御には更なる検討を要すが、この手法により、蛍光及び電位測定よる機能解析を強力に進めることが期待できる。ナノギャップ電極では,電極より印可した電圧による、分子挙動が制御可能であることが確認できたものの、検出手法としての検討までは至らなかった。また、金ナノロッドでは、表面に脂質二重膜をコーティングすることによりロッド間隔が3-4nmの脂質膜の厚さに相当する均一な間隔での配列を可能にした。これにより、はしご状の1次元や2次元、3次元の配列化に成功した。ロッド表面は脂質二重膜で覆われているため、タンパク質の配列制御やSERSによる解析に利用できるものと期待される。一方、機能解析については、再構成した神経受容体タンパク質(AMPAR,NMDAR等)について、チャンネル活性を示す電気特性が得られ、ナノホール電極での電気計測への発展につなげることができた。
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