研究概要 |
本研究では、Si基板上に作製した極薄Si酸化膜を利用してナノドットを形成し、さらにこれらのナノドットを種結晶として良質の薄膜をヘテロエピタキシャル成長するためのナノチャネル・ヘテロエピタキシャル薄膜法を開発する。これらの研究により、Si基板上に発光効率の大きい異なる物質(GaSb,GaAISb,Ge,GeSn)の薄膜デバイスを開発し、Si電子デバイスとSi光デバイスの融合を目指す。本年度は、Si基板表面上にGaSb薄膜とGe薄膜を作製し、その物性を評価する研究を行い、以下に示す結果を得た。 極薄SiO_2膜を形成したSi基板表面に比較的高温で少量のGeを蒸着し、Ge+SiO_2→GeO+SiOの化学反応を用いてナノドットの成長核となるSi開口部を形成した後、200℃程度の低温でGaとSbを蒸着して、Si基板上に超高密度のGaSbナノドットを形成した。これらのナノドットを種結晶として、GaとSbを前半は200℃と300℃の基板温度で、後半は450℃の基板温度で蒸着するという3段階蒸着法によって、表面が平坦で結晶の良い発光効率の高いGaSb薄膜がSi基板上に成長できることが分かった。以上の最適成長条件を用いて形成した試料から、強度の大きいフォトルミネッセンス(PL)とエレクトロルミネッセンス(EL)を観測し、室温においてもPLとELが観測できることを確認した。 同様に、極薄SiO_2膜を形成したSi基板表面に540℃の温度でGeを蒸着し、上記の化学反応を用いて成長核となる約5nm径のGeナノドットをSi開口部に形成した。その後、複数のGeナノドットを効率的に合体させ薄膜状にするために、200℃程度の低温でGeを60nm程度の厚さで蒸着した。さらに、結晶性の向上のために500℃程度の高温でGeを60nm程度蒸着することによって、表面が平坦で結晶性の良いGe薄膜が成長することが分かった。本試料の透過電子顕微鏡による格子像の観察から、結晶欠陥はわずかに界面付近に存在しているが、界面における極薄Si酸化膜の存在により、SiとGeの格子定数の違い(~4%)によって発生する格子歪が殆んど緩和されることも分かった。
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