研究課題
1)負イオン注入処理による高分子材料の表面改質効果を調べるため、炭素負イオンをポリスチレンPSやシリコーンゴムSRに5-10 keVで注入した。注入処理により材料表面は親水化した。XPS分析から親水化には、ヒドロキシル基やカルボニール基などの有極性親水基が表面に導入された事に起因したことが判明した。水滴法で測定するとスピンコートしたPS膜では90°から75°に低下し、気泡法で測定すると86°から65°に低下した。注入量3x10^15 ions/cm^2で接触角の低下は飽和した。水中での親水化進行は、イオン注入誘起欠陥が表面から深さ20nm程度まで生じており、この欠陥を介して水分子が侵入し、親水性官能基を形成したことによる。2)間葉系幹細胞の接着特性を調べるため、スピンコートしたPSやSRシートに炭素負イオンをパターン注入して、殺菌後にラット骨髄液の間葉系幹細胞MSC(成体幹細胞)を播種して培養を行った。培養したMSC細胞は、注入領域に沿って細長く伸展した形状で表面に粘着し、未注入領域では丸い形状で緩く接着した。培地交換により、丸い形状の細胞は表面から脱落し、注入パターに沿って配列したMSC細胞のパターン接着配列が得られた。最適なパターンを得る炭素負イオン注入量は、PSが3x10^14 ions/cm^2とSRが1x10^15 ions/cm^2と材料により異なった。3)パターン配列接着間葉系幹細胞の神経細胞への分化誘導をβメルカプトエタノールBMEを誘導剤として用いた結果、PSとSRの両方において、接着パターンを保持したままの丸い細胞体と細長いフィラメントを伸ばしたニューロン様の細胞に分化した。蛍光抗体法により、神経特異エノラーゼNSEが分化細胞から検出され、分化細胞が神経細胞であることが確認された。以上から、間葉系幹細胞をパターン接着させ、パターンを保持したままで神経細胞に分化誘導する事に成功した。
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