試料一探針間に働くパルス引力を検出するシステムを開発した。時間分解計測を行うために、カンチレバーの運動と同期して、試料一探針間にパルス引力を誘起する。このときの引力を周波数シフトとして検出した。周波数シフト法を用いるために、カンチレバー振動は自励発振により励起されている。従って、カンチレバーの振動とパルス引力を誘起するパルス電位やパルス光を同期させるための外部基準信号は無く、振動周波数は常に変動している。そこで、カンチレバー振動の一回ごとのストロークを検出してトリガー信号を生成することで、カンチレバーの運動と同期してパルス電圧印加やパルス光照射するシステムを構築した。カンチレバー振動の振幅が一定になるように、試料位置のz軸フィードバックをかけることにより、カンチレバーの振動中心と試料表面の距離を一定に保った。これにより、トポグラフ測定を行いながら、これと分離する形で引力成分の画像取得を同時に行うことができる測定システムを確立した。 シリコン単結晶を試料に用いて、構成した計測システムの動作検証と特性評価を行った。パルス光照射時に生成する表面起電力を利用して、試料一探針間にパルス静電引力を発生した。このパルス静電気力とカンチレバー運動の位相関係を変化したとき、周波数シフトが鋭敏に反応することを見出し、本計測システムで時間分解静電気力計測が可能であることがわかった。 本研究の目的であるバイオ分子の静電的性質を調べるには、絶縁体基板を用いる必要がある。鋭利な探針先端に誘起される不均一電界を利用することで、絶縁体基板上でも導体基板と同様の分子やナノ粒子の電荷イメージングが可能であることがわかった。さらに静電気力の電位スペクトルを測定したところ、二次曲線と一致することから、絶縁体基板上においても、導体基板を用いたときと同様の解析方法が利用可能であることがわかった。
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