表面が水に接した絶縁体基板の裏側電極に電位をかけ、表面に誘起された電気二重層による力の変位を検出を試みた。引力検出を行うために周波数シフト法を採用した。カンチレバーは自励発振で周波数は常に変動している。カンチレバーを自励発振したときの振幅をフィードバック信号として用いて、表面と振動中心の距離を一定に保ちながら周波数シフトを検出することで、表面分極による静電気力を検出するシステムを構築した。 基板裏側にかけた変調信号と同期した周波数シフトの成分を検出することができた。周波数シフトを与える引力には、基板全体とカンチレバー全体の間にかかる静電引力と表面上の局所分極と探針先端のみの間にかかる静電引力に大別できる。前者と後者の区別を行うために、試料-探針間距離を変えながら、振幅と周波数シフトの変化の測定を行った。振幅は、探針が基板から遠いときから、基板裏側電極による変調が観測された。このことは、誘電体である水を媒質として、基板とカンチレバーの間に巨視的なコンデンサーが形成されていることがわかる。しかし、周波数シフトの変調は、探針が表面に接触する距離になって初めて現れることがわかった。したがって、周波数シフトは、基板裏側電極による変調による局所的な相互作用を検出できることがわかった。ただし、この周波数シフトには、巨視的変調によるフォースモジュレーションの項が含まれていると考えられる。今後、電気二重層などによる局所的静電相互作用による引力成分の分離を行う必要があることが明らかになった。
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