研究概要 |
1.C_60超潤滑ベアリング機構の解明 グラファイト/C_60/グラファイト界面の超低摩擦特性の予備シミュレータを構築した。これを用いて、グラファイト/C_60/グラファイト界面で、上層グラフェンを走査する時、C_60分子に特徴的な、スティック・スリップを伴う並進運動や振動運動、回転、転がり運動がどのように超潤滑機構に寄与するかを、[1010]方向の走査に対して調べた。計算の結果、超潤滑には、C_60の回転だけではなく、弾性変形やグラフェン/C_60界面での接触状態など複数のファクターが寄与している事が示された。このようにC_60の内部自由度が、ベアリング系がグラファイト系よりも優れた超潤滑特性を示す起源の一つであることを明らかにした。(N. Itamura et al:. Jpn. J. of Appl. Phys.48,030214(2009)) 2.原子スケール摩耗:グラフェン探針生成機構の解明 フラーレン-グラファイトハイブリッド表面を探針でこする場合、グラファイト/グラファイト界面で滑りが起きる場合と、フラーレン/グラファイト界面で滑りが起きる場合が想定される。グラファイトの超低摩擦機構を知る事は、フラーレンーグラファイトハイブリッド材料の超低摩擦機構を議論する事につながるため、探針・グラファイト多層膜系のシミュレーションを行い、特に探針-表面接触領域近傍の探針、及び最外層グラフェン、第二層グラフェンの振る舞いを調べた。フレーク探針の生成する機構と超低摩擦との関係を議論するため、各探針高さの任意の結晶軸方向に対して、水平走査を行い水平力曲線を計算したところ、滑り特性が、摩擦力顕微鏡探針による摩擦からフレーク探針による摩擦への遷移を見せた。この知見は原子スケール摩耗の初期過程とみなす事が出来る。(N. Sasaki et al.:e・J. Surf. Sci. Nanotechnol.8,173-180(2009))
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