研究概要 |
1. C_<60>分子超潤滑ベアリングにおける特異なゼロ摩擦領域の原子スケール機構 (N.Itamura, H.Asawa, K.Miura, N.Sasaki : J.Phys. : Conference Series 258, 012013(2010)) 初年度開発した超低摩擦特性解析シミュレータを用いて、次年度はC_<60>分子ベアリング系(グラファイト/C_<60>/グラファイト界面)の超潤滑の異方性を発見し、摩擦力が数10pNで極大になる領域のメカニズムを明らかにした。そこで最終年度は摩擦力が1pN以下で近似的にゼロになる特異な領域の微視的メカニズムに焦点を当てた。上層グラフェンの各走査位置に対して、C_<60>分子一個が受ける全ポテンシャルエネルギーV_<total>をC_<60>分子の中心位置の関数として計算した結果、全走査過程で(1)C_<60>分子は極小点Pに位置しながら移動する事、(2)上層グラフェンの走査に伴う、隣接二極小点間のエネルギーバリア△V_<total>が、常に有限値となる事が分かった。従ってT→0Kかつ走査速度v→0の極限では、C_<60>分子は現在の極小点Pから隣接極小点にジャンプしない。このように往復の全走査過程で全ポテンシャルエネルギー面上に有限のエネルギーバリアが存在するため極小点(C_<60>分子)が連続移動し、その結果特異なゼロ摩擦領域が現れる事を明らかにした。 2. グラフェンシートの超潤滑 (N.Sasaki, H.Okamoto, S.Masuda, K.Miura, and N.Itamura : J.Nanomat. 2010, 742127(2010)) C_<60>分子ベアリング系のスライド部分である矩形グラフェンシートの剥離に着目し、剥離過程が矩形グラフェンの縦横比率に強く依存する変形を伴って進む事を示した。
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