本研究の目的は、光照射によって起こる有機分子の可逆的重合反応を利用し、新たな機構に基づく再書き込み可能なホログラム記録材料を開発することにある。近年Blu-ray discの次の世代の光メモリーの有力候補として、ホログラフィックメモリーの開発が活性化しており、ホログラム記録材料の開発、改良が急務であると認識されている。しかし、フォトポリマーは不可逆的な光重合反応による屈折率変化を利用しているため、書き換えの不可能な使いきり材料である。メモリーとしての実用性を考えると、書き換え可能材料に対する需要は大きい。 そこでわれわれは、連携研究者の一人である吉江がこれまで研究してきた、可逆的重合反応を利用した再利用可能なポリマー材料に着目し、この材料をべ一スに、ホログラムの書き込みは光反応で、消去と初期化は熱反応で起こるような、再利用可能なホログラム記録材料を実現しようというものである。 平成20年度は、熱履歴により結晶状態を変えるような高分子を用い、レーザー照射による屈折率変化の実験を行った。強度と時間を変化させてレーザー光を照射し、屈折率変化を誘起した。現在、光照射前と後での結晶状態の変化、屈折率の変化の測定を行っている最中である。また、光重合をすることが知られている低分子を用い、光反応による屈折率の変化に関する実験も準備を進めている。現在、試料の透過スペクトル、照射前の屈折率などの基礎測定を行っており、またサンプルが光応用に耐えうるような均一性、低散乱などの条件を満たすためのサンプル作りのプロセス探索も行っている。
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