研究概要 |
本研究では、光照射によって起こる有機分子の可逆的重合反応を利用した、新たな機構に基づく再書き込み可能なホログラム記録材料に関する研究を行っている。次世代光メモリーの有力候補であるホログラフィックメモリーの記録材料は、現状ではフォトポリマーが主流であるが、これは不可逆的な光重合反応による屈折率変化を利用しているため、書き換えができない。そこでわれわれは連携研究者の一人である吉江がこれまで研究してきた、可逆的重合反応を利用した再利用可能なポリマー材料に着目し、この材料をベースに書き換えあるいは全消去による再利用が可能なホログラム記録材料の実現を目指している。 本年度は、温度履歴によって異なる結晶状態をとるbis-furnicpoly (1,4-butylene succiante-co-1,3-propylene succinate)とtris-maleimidesからなる材料を用いて、光照射による温度上昇を利用して温度履歴を制御し、それによる屈折率変化を計測した。 Arイオンレーザーの458nmのビームを材料に照射し、試料の屈折率変化をマッハ=ツェンダー干渉計により計測した。照射強度、照射時間の制御により、材料の結晶化状態を制御し、最終的に屈折率の異なる状態を作り出した。試料の厚み方向に積分された最大平均屈折率変化は0.0002程度で、大きさとしては必ずしも十分とは言えないが、局所的な屈折率変化はそれよりも大きいことが予想される。今後、より精密な局所的屈折率変化の測定を行うとともに、ホログラフィー応用だけでなく、書き換え可能型の光導波路としての応用の可能性に関しても探っていく。
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