本研究はフォトポリマー中に均一分散したナノ微粒子の空間的分布をホログラフィック露光により純光学的にアセンブルする手法(以降、ホログラフィックナノ微粒子アセンブリングと略記)の確立とそれを利用した新規光機能素子の創成を目的とする。本年度に実施した研究の成果は以下の通りである。第一に、時間依存Ginzburg-Landau方程式により2次元空間でのホログラフィックナノ微粒子アセンブリングの動力学を相転移ダイナミクスの観点から定式化するとともに数値シミュレーションを行った。その結果、光重合に伴う相転移ダイナミクスのナノ微粒子初期濃度や相互作用パラメータ値への依存性について明らかに出来た。第二に、ナノ微粒子-ポリマーコンポジット中に記録されたホログラムの熱的安定性について実験的に究明した。その結果、従来の有機フォトポリマーに比べて熱膨張率を1/3程度低減出来ることが出来、それに伴いホログラム記録多重度を増大出来ることを明らかにした。第三に、記録光に光吸収の殆ど無い水素供与体/受容体を増感剤としてZrO_2ナノ微粒子-ポリマーコンポジットに添加することで、ホログラフィック記録感度を1桁程度増大できることを実証した。第四に、チオール・エン系モノマーへのナノ微粒子分散により記録したホログラムの体積収縮率を0.4%程度まで低減できることを実証した。第五に、実時間フーリエ変換赤外分光光度計によりナノ微粒子-ポリマーコンポジットの光重合過程への影響を究明し、重合速度および重合変換率へのナノ微粒子分散の影響は少ないことを明らかにした。第六に、ZrO_2ナノ微粒子-ポリマーコンポジットのホログラフィック多重光記録特性について究明し、角度多重法と面内回転多重法を併用することにより膜厚500ミクロンで100枚以上の均一なホログラム多重記録を実証した。
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