研究概要 |
ポストゲノム時代に入り、生命機能の物質的基盤であるタンパク質の機能とその発現メカニズム、タンパク質分子間の相互作用、ネットワークの解析に関する研究が注目を集めている。本研究では、超短パルスレーザーを用いる新しいタイプの四光波混合非線形光学顕微鏡の研究を進めた。本年度は特に、誘導パラメトリック発光(stimulated parmetric emission, SPE)顕微鏡のアプリケーション探索と誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering, SRS)顕微鏡の改良に注力して研究を進めた。SPE顕微鏡では、生体試料において強い紫外・可視吸収を持つ部位を3次元的に可視化できることが期待される。そこで、観察対象とする生体試料を、培養細胞から様々な組織に広げた。その結果,無染色の赤血球からSPE信号の強いコントラストが得られることを見出した。そこで、様々な条件の赤血球の観察を進めたところ、赤血球の固定・非固定試料の違いが顕著に現れることがわかった。また、脳組織等の観察を行ったところ、主に密度の違いに由来するコントラストによって、脳組織内部の3次元可視化ができることも実証した。SRS顕微鏡に対しては、光パラメトリック発振器をファイバーレーザーに置き換えることによって、光源の波長可変性の拡大を試み、観測可能なラマンシフトを従来の2900~3800cm^<-1>から2000~3100cm^<-1>に変更し、よりクリアな脂質イメージングが可能になった。以上を通じて、SPE・SRS顕微鏡のバイオイメージングにおける有用性を向上させたと考えている。
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