ホログラフィックメモリの記録容量の上限を決定する2つの要因として、多重記録におけるページ間クロストークノイズと材料収縮について解析し、記録容量を向上させる方法について研究を行った。今年度の研究では、反射型ホログラフィックメモリにおいて、共焦点系導入による3次元多重記録の最適化と記録材料の最適設計を行った。はじめにページ間クロストークノイズを低減し、記録容量を向上させる方法として、記録材料面に相当する位置にナイキスト径の2倍の開口を導入した。独自に開発したホログラフィックメモリ解析シミュレータを用いた数値解析の結果、クロストークノイズ低減効果のレンズ開口数依存性を示し、高開口数のレンズを用いた際にノイズ低減効果が顕著に現れることを明らかにした。また、スペックルシフト多重記録計算の結果から、共焦点光学系によるビット誤り率の低減を確認した。その結果、5インチサイズで厚さ0.5mmのディスクにおいて、開口数が0.38のときに、記録容量は1.3TBから4.35TBに増加することがわかった。理想的な系における記録容量の上限値が上がることで、実用化時にテラバイトクラスの記録容量を実現できる可能性が向上する。 次に記録材料の収縮特性解析では、フォトポリマー材料のマクロな収縮モデルを提案し、収縮による再生データへの影響と角度多重記録性能を調べ、記録材料の収縮率許容量を算出した。特に、局所的に収縮率が変化するモデルを新規に導入した。入力データに符号化技術を導入した時の結果から、収縮率の許容量は0.1%から0.2%の間であることを明らかにした。定量的な収縮率の導出は、材料開発者に対する指針を与えることができるため、ホログラフィックメモリの材料開発に有用である。
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